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スイスアルプスハイキング・・・urabanashi.jpg(14097 byte)

マッターホルンとハイカー
「スイスアルプスハイキング」は、日本では1982年にスタートした。



というと異議を唱える人がいるかもしれない。たしかにそれ以前にも、スイスのアルプスをハイキングする日本人がいなかったわけではない。 有名な登山家に引率された日本のハイカーが、ツアーを組んで歩く、スペシャルインタレストツアー(SIT)はたしかに見られた。



しかし、「スイスアルプスハイキング」は、日本ではハイキングをしたことのないような、一般の旅行者が、普通のツアーの一部として、 ハイキングを楽しめるように工夫されたものなのである。



■ スイス本国のキャンペーンテーマ

1981年、スイスのチューリヒに本部を置く、スイス政府観光局は、世界的に「スイスを歩こう」というキャンペーンを打ち出した。 それまで、数々のインフラの整備に精出してきたスイスの観光業界も、そろそろ 新しい登山鉄道や、新しい建造物を建てるといった力のインフラに頼ることは、資金的にも環境的にも困難な時代に入り、 知恵によるインフラへと方向転換はじめた初期である。



ハイキングコースを整備すること以外に特にハードなインフラを必要としないハイキングは、こうして2年がかりのキャンペーンテーマに選ばれた。 2年かけたわけは、1年目の1982年を国内整備に、2年目の1983年を海外への宣伝にあてる目算であった。



■ 日本人でも出来るハイキングを目指して

アイガーとホテル
東京の政府観光局にこのニュースがもたらされたのは1981年のこと。 折から日本の旅行業界では、seeingからdoingへの旅行目的の拡大がちらほら話題にのぼっていた。



しかし、スイスを歩くなんて、とっても無理、わざわざ数十万円も払ってテクテク山を歩く人なんている筈がない、というのが大方の反応であった。 そこで、スイスへの観光旅行中に、無理なくハイキングをしてもらうにはどうしたら良いか?



阻害要因を取り除くために、つぎの7点を考えた。
1) 海外旅行中に無理なくハイキング出来るコース選び
2) 有名観光地に近いこと
3) 乗り物でハイキングのスタート地点に行けて、終わったらまた
    乗り物で帰れること
4) コースの両端に駅、またはレストランがあること
5) 乗り物がハイキングコースから見えていること
6) 1時間から1時間半のコース選び
7) 棚状か、下り坂のハイキングコースで、登り坂を除外する




シュタインボック
スイスには、幸いに、地球一周より長い5万キロのハイキングコースがあり、その9割は、黄色のハイキング標識で統一されている。 こうした7つの条件を満たすコースだけでも数百キロは確保できることは間違いないが、こうしたコースを歩いてみて実測し、 日本人を説得できる説明を組み立てなくてはならない。



■ 一転して出張扱いに

私は、実施の前年に現地視察を申請した。しかしスイスから来る情報を、日本にいたままでやりくりすればいいではないかという理由で、 スイス人上司の許可が下りない!
高山植物イメージ




やむなく私は休暇を取った。宿泊は、あるホテルチェーンに提供してもらい、当時のスイス航空の援助を受けて、 ひとりチューリヒのスポーツ用品店の店頭に立った。



上から下までハイキング用品を揃え、それも一つの情報としながら、上記の条件を満たし、なおかつスイス全国を網羅するという スイス政府観光局の基本姿勢を守りつつ、百キロ近くを単独踏査したのである。



日本では、すでにこの趣旨に賛同してくれていた、JTBのルックが、一年間エクスクルーシブでルックから販売するという形で、 ひそかにgo signを出してくれていた。



ハイキングガイド表紙 ハイキングパス
帰国後、調査内容は、「スイスハイキングガイドースイスを歩こう」というハンドブックにまとめ、 このガイドはそれから十数年にわたり再版を続けた。一方、一般紙にも大きな反響が載せられ、ツアーを発売したルックは、 同年に千人を越すハイカーをスイスに向け送り出した。



この成功を見て、はじめて私の休暇は出張に切り替えられ、遅まきながらスイスアルプスハイキングの誕生が認知されたのであった。



いまでは、夏のスイス向けツアーで、ハイキングを含めないものはない、というほどに一般化した。 ツェルマットで、マッターホルンを飽きるほど眺めながら下るコースは、現地で「ジャパン・コース」と呼ばれるほどポピュラーになっているという。 スイスの5万キロに及ぶハイキングコースのほんの一部ではあるが、「スイスアルプスハイキング」は、 日本人の行動パターンにマッチした、エコロジカルであり、サステイナブルであり、歩く早さが一番ものがよく見えるという、 最上の「いいとこ取り」でもある。



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